劔和會では、武術の実践だけでなく、それを支える日本の伝統文化や工芸への理解を大切にしています。その一環として、今回は上野に店を構える組紐の老舗「道明(どうみょう)」をご紹介します。
組紐と武術の関係
組紐は、刀の下緒(さげお)や鎧の緒など、武士の装備に欠かせないものでした。実用性はもちろんのこと、美しさや格式をも表す重要な存在でした。なかでも「道明」の組紐は、実用品でありながら美術品とも言える仕上がりで、武具の一部としても高い評価を受けています。
「道明」の歴史と精神
道明は江戸時代中期に創業し、現代まで途絶えることなく組紐の技を伝えてきた老舗です。上野にある店舗兼工房では、今も職人たちが一つひとつ手作業で紐を組み上げています。その姿は、武術の「形」に通じるものがあります。数百年にわたって研ぎ澄まされた技術と心が、一本の紐の中に込められているのです。
日本の伝統色が息づく世界
道明の組紐が多くの人を魅了する理由のひとつに、「色」があります。
使われているのは、平安時代や鎌倉時代の装束に見られるような伝統色。たとえば、落ち着きのある紫紺(しこん)、優雅な緋色(ひいろ)、静寂を思わせる藍白(あいじろ)など、日本独自の美意識が感じられる色彩が紐に織り込まれています。
その色の組み合わせには、「陰陽五行」や「四季」「自然観」といった、古来より日本人が大切にしてきた哲学がにじみます。一本の紐を手に取れば、その向こうに連綿と続く日本の精神文化を垣間見ることができるのです。
武道と工芸の融合
劔和會でも、道明の組紐を下緒に使用している門人がおります。鍛錬された身体と精神に、道明の組紐が静かに寄り添い、稽古の場に日本の美と伝統を添えてくれます。
組紐は、単なる道具ではありません。それは、精神を結び、過去と今をつなぐ“縁”の象徴でもあります。
道明 店舗情報
所在地 | 東京都台東区上野2-11-1 |
TEL | 03-3831-3773 |
機会があれば、ぜひ店舗を訪れ、実際に組紐の美しさと空気感に触れてみてください。