東京・青山道場の居合の稽古や活動を記録しています。
温かくなってきて、動きやすい時期になってきました。しっかり稽古に励んでいただきたいですね。
6月1日(月)
武術は自己修養

武術は、稽古を通して心身を磨き、自らを高めていくものです。
そのため、本来は人と優劣を競うものではありません。
誰が上か、誰が下かを気にし始めると、稽古の目的を見失い、時には他人と比較したり、人の評価を気にしたりするようになります。
武術の本当の相手は他人ではなく、昨日までの自分です。
自分の弱さや未熟さと向き合い、一歩ずつ成長していくこと。
その積み重ねが、技術だけでなく人としての成長にもつながります。
武術を学ぶのであれば、常に自己修養の心を忘れずに稽古に励みたいものです。

6月3日
感覚の持ち方で動きは大きく変わる

居合では、同じ真向斬りであっても、どのような感覚で刀を扱うかによって動きは大きく変わります。
例えば、
- 手の内をどのように感じるか
- 小指をどのように使うか
- 刀の重さをどのように感じるか
といった感覚一つで、速さや斬撃の質は大きく変化します。
しかし、こうした感覚は知識として知ればすぐに身につくものではありません。
まずは形や手順を覚え、身体の使い方を学び、その上で少しずつ理解できるようになるものです。
技術の習得に段階があるように、感覚の習得にも段階があります。
焦らず稽古を積み重ねることで、これまで見えなかった感覚が少しずつ身についてくるものだと思います。

6月4日
丸く切る
刀は反りのある武具です。
そのため、真っ直ぐ力任せに振るのではなく、刀の形状に沿って丸く扱うことで、速く、無理なく、そしてしっかりと斬ることができます。
初心者の段階では、まず大きく伸び伸びと動くことが大切です。
小さく器用に動こうとするよりも、正しい軌道で大きく動くことで、身体の使い方の土台が作られていきます。
そして、初段前後になり動きに慣れてくると、身体の使い方を学びながら、より効率的な動きを追求していきます。
大きく動くことと、効率的に動くことは対立するものではありません。
段階を踏みながら学ぶことで、無駄な力を使わず、自然に速く力強い斬撃へとつながっていきます。

6月7日
丁寧な稽古

初段前後になると、刀を抜く際に鞘を返しながら抜く動きを学びます。
しかし、この段階になると、刀と鞘が干渉してしまい、鞘の内側を削ってしまうことがあります。
居合では、腕の力で刀を引き抜くのではなく、鞘引きによって刀を抜くことが重要です。
その感覚を身につけるために、
- 素手を鞘に見立てて抜いてみる
- 鞘を帯から外した状態で抜いてみる
など、さまざまな稽古法があります。
技術を身につけるためには、ただ回数をこなすだけではなく、課題に応じて工夫しながら丁寧に稽古することが大切です。その積み重ねが、結果として上達への近道になるのだと思います。

6月10日
器用さと上達は必ずしも一致しない

稽古をしていると、新しいことを器用にこなせる方がいます。
入門して間もない段階でも、基本や形の手順をすぐに覚え、周囲から見ても上達が早いように見えることがあります。
しかし、動きができることと、身体に技が定着していることは別の話です。
十分に反復しないまま次の段階へ進んでしまうと、しばらく稽古ができない期間があった際に、簡単に動きが崩れてしまうことがあります。そして、「以前はできていたのに」という思いが、かえって本人の負担になってしまうこともあります。
指導する立場としては、できるようになった方を早く次の段階へ引き上げたくなるものです。しかし、本当に大切なのは、一時的にできることではなく、身体が自然に動くまで身につけることです。
技術は理解しただけでは定着しません。ある程度の反復を重ね、身体が覚える段階まで稽古することで、初めて本当の意味で身についたと言えるのだと思います。
焦らず土台を固めることが、結果として最も確実な上達への道になるのではないでしょうか。

6月14日
過去の経験は無駄にならない

居合には独特な身体の使い方がありますが、これまで経験してきた武術やスポーツが活きる場面は少なくありません。
例えば、剣道の経験がある方は刀を振る動きに慣れており、斬る感覚を掴みやすい傾向があります。また、テニスやバドミントンなどラケットを扱う競技を経験した方は、長いものを操作する感覚を持っているため、刀の軌道を理解しやすいことがあります。水泳を続けていた方は背中を使う感覚が身についており、ラグビーやアメリカンフットボールを経験した方は、安定した腰や力強い踏み込みを備えていることがあります。
もちろん、居合には居合ならではの身体の使い方があります。しかし、これまで積み重ねてきた経験が土台となり、新しい技術の習得を助けてくれることも少なくありません。
子どもの頃に取り組んだことも含め、人生の経験は決して無駄にはならないものです。

6月17日
敵の動きに応じる稽古

居合は一人で形を行う武術です。
そのため、稽古を続けていると、つい手順や動作そのものに意識が向きがちになります。しかし、本来の居合は、目の前の敵の動きに応じて行うものです。形の中には敵の攻撃や動きが含まれていますが、一人で稽古していると、その存在が薄れ、空間に向かって動いてしまうことがあります。
そこで劔和會では、初段以降になると、敵役を立てて相手の動きに応じる稽古も行います。
間合いや形の正確さを一度脇に置き、実際に相手が斬りかかってくる動きに合わせて抜いてみることで、
- なぜそのタイミングで抜くのか
- なぜその方向へ動くのか
- なぜその間合いが必要なのか
が理解しやすくなります。
居合は形を覚えるだけではなく、敵の動きに応じる武術です。
相手を感じながら稽古することで、形の意味もより深く見えてくるようになります。

6月18日
新しいことを始める喜び

劔和會に入会される方の目的は実にさまざまです。
- 健康のため
- 日本文化を学ぶため
- 精神的な強さを身につけるため
- 刀が好きだから
- 古武術の身体の使い方を学びたいから
人によって稽古を始める理由は異なります。
また、稽古を続けていくうちに、その目的が変化していくことも少なくありません。
最初は刀に興味があって始めた方が、気がつくと身体の使い方の奥深さに魅了されていたり、健康のために始めた方が武術の精神性に惹かれたりすることもあります。
武術の道は決して一つではありません。
劔和會は、深い技術の習得を目指す方はもちろん、それぞれの目的を大切にしながら、武術を通じて人生がより豊かになる場でありたいと考えています。
新しいことに挑戦する喜びと、成長する楽しさを感じられる道場であり続けたいですね。

慣れによる崩れ

初段前後になると、居合の動きにも少しずつ慣れてきます。
抜打ちで刃音が出るようになったり、以前よりスムーズに刀を扱えるようになったりと、上達を実感できる時期でもあります。しかし、その一方で注意しなければならないことがあります。
それは、自分の動きやすいように、知らず知らずのうちに形が変化してしまうことです。
人にはそれぞれ癖があります。慣れてくると、その癖が動きの中に現れ、本来の形から少しずつ離れてしまうことがあります。この段階では、形を改めて見直し、自分の癖を修正していくことが大切です。
せっかくできるようになったと思っていたのに修正されると、時には戸惑いや悔しさを感じることもあるかもしれませんが、それは次の段階へ進むために必要な過程です。
上達しているからこそ見えてくる課題を受け入れ、地道に修正を重ねることで、より正確で質の高い動きが身についていきます。

6月21日
成長に年齢は関係ない

新しいことを覚えたり、技術を身につけたりするスピードは、一般的には若い人の方が速いと言われます。
確かに、若い頃はスポンジが水を吸収するように、新しいことを柔軟に受け入れる力があります。
しかし、武術の稽古を見ていると、年齢だけで上達が決まるわけではないことを実感します。
年齢を重ねていても、
- 素直に学ぶ姿勢
- 継続して稽古する努力
- 教わったことをそのまま実践する姿勢
があれば、驚くほど成長される方がたくさんいます。
武術は誰かと競争するものではありません。
昨日の自分より少しでも成長することを積み重ねていけば、年齢に関係なく技術は磨かれていきます。
始めるのに遅すぎることはありません。

6月29日
それぞれの課題に向き合う

一般的な武術の稽古というと、全員が一列に並び、同じ内容を一緒に稽古するイメージを持たれる方も多いと思います。しかし、劔和會では一人ひとりの課題に合わせた稽古を大切にしています。
武術の習熟度や課題は人それぞれ異なります。
初心者は手順や基本を身につけることが課題となり、有段者は理合や身体の使い方など、より深い内容に取り組みます。
全員が同じ内容を一斉に稽古していると、誰かが指導を受けている間、他の方の時間が止まってしまうことがあります。
そのため劔和會では、それぞれが自分の課題を理解し、自主的に稽古を進めながら、必要に応じて個別に指導を行っています。
自分の課題に集中できるため、限られた稽古時間を有効に使うことができ、結果として上達も早くなります。
武術は他人と競うものではなく、自分自身の課題と向き合い続けるものです。
一人ひとりに合った稽古を積み重ねることが、着実な成長につながっていきます。


















