百足伝 全釈|第十首「體と太刀と一致に成りてまん丸に 心も丸きこれぞ一圓」

目次

語釈

體(たい)

身体。ここでは、太刀を扱う自身の身のこなし全体を指す。

太刀(たち)

刀。剣術における得物。

一致に成りて

身体と太刀の動きが、寸分の隔たりなく一つに重なり合うこと。

まん丸に

角のない、完全な円のような状態。

一圓(いちえん)

一つの円。角がなく、どこにも滞りのない、完成された境地を象徴する語。

直訳

身体と太刀の動きが一致するようになり、まん丸に、心もまた丸くなる。これこそが一圓である。

現代語訳

身体と太刀の働きが寸分の隔たりなく一つとなり、まるで角のない円のようになる。そのとき、心もまた丸く、どこにも留まることがない。これこそが「一圓」と呼ばれる境地である。

解説

この歌は、身体と太刀が一体となった究極の境地を、「円」という形に託して詠んでいます。

円には角がありません。角とは、動きの中でどこかに生じる引っかかり、力み、あるいは予備動作のようなものです。身体と太刀の動きに角(滞り)がなくなり、なめらかに一つに溶け合った状態を、この歌は「まん丸」と表現しています。

そして、その丸さは身体や太刀の動きだけに留まりません。「心も丸き」と続くように、心もまた同じように、角のない状態であることが求められます。心にわだかまりや執着があれば、それがそのまま身体の動きに角として表れてしまいます。逆に、心が丸く、どこにも留まらず流れ続けていれば、太刀もまた自然と丸くなめらかに動きます。

「體」「太刀」「心」という三者が、いずれも角を持たず、一体となって円をなす。これが「一圓」という境地であり、無外流が目指す究極の姿の一つと言えるでしょう。

私(塩崎関舟)の考え

居合の稽古を行っていると、刀そのものが、身体の使い方を教えてくれると感じることが多々あります。刀は真っ直ぐではなく、緩やかな弧を描いています。この反りに逆らわず、身体もまた丸みを帯びた軌道で動かしていくと、力みのない、自然な動きが生まれます。

一方で、心が相手にとらわれていると、この丸い動きができなくなります。「こう来るはずだ」「ここを打とう」という思いに固執すると、動きはどこかで直線的になり、角が生まれてしまいます。心もまた常に丸く流し続けることで、初めて相手の動きに応じた、なめらかな対応が実現できるのだと感じています。

刀の反りに身体を委ね、心を丸く保つ。この歌が説く「一圓」とは、まさにそうした稽古の中での実感そのものだと思います。

日々の生活に活かす

私たちは、物事に対して「こうあるべきだ」という考えに固執すると、対応が硬くなり、周囲との摩擦を生んでしまうことがあります。

角のない円のように、状況に応じてしなやかに形を変えられる心を持つこと。それは、意思がないということではなく、むしろ、どんな状況にも対応できる強さだと思います。

身の回りに起きる出来事に、一つひとつ引っかかることなく、丸く受け流しながら前へ進んでいく。そうした在り方が、日々を穏やかに過ごすための一つの知恵ではないでしょうか。

百足伝 全釈について

他の記事

『百足伝全釈 ― 無外流の教えを現代に読む ―』は、無外流居合の源流である自鏡流の流祖、多賀自鏡軒盛政がまとめた『百足伝』四十首を、一首ずつ現代語訳・解説し、塩崎関舟の考えを交えながら読み解くシリーズです。
修行者の心構えはもちろん、現代を生きる私たちの日々の生活にも活かせる普遍の教えをお届けします。

ご注意

『百足伝』には、現在広く定着した現代語訳や解釈が存在するわけではありません。
本ページに掲載している直訳・現代語訳・解説は、古文書や関連資料、無外流の伝承、そして長年の稽古を踏まえ、塩崎関舟が現時点での研究成果としてまとめたものです。
解釈にあたっては、古文書や古典の専門家のご意見も伺いながら検証を進めておりますが、新たな史料や知見、また伝承との照合によって、今後内容を加筆・修正する場合があります。
お気づきの点や異なるご見解、ご助言などがございましたら、ぜひメールにてお寄せください。
皆さまからいただいたご意見も大切な研究資料として参考にさせていただき、より正確で価値ある『百足伝 全釈』となるよう、これからも研究を重ねてまいります。

劔和會 青山道場で古武術を学ぶ

無外流居合と神道夢想流杖術を学ぶことができます。東京都港区・青山に常設道場があり、平日昼夜・土日祝も稽古を行っています。初心者から経験者まで、それぞれの目的や生活スタイルに合わせて稽古を続けることができます。

はじめはスポーツウェアなど動きやすい服装でご参加いただけます。武具のレンタルもあるため、特別な準備は必要ありません。初心者の方にも分かりやすく丁寧に指導を行っていますので、武術未経験の方でも安心して始められます。

劔和會では、無外流居合兵道および神道夢想流杖術を正しく継承し、次代へ伝えることを大切にしています。山田宏先生より受け継いだ教えをもとに、免許者が責任を持って指導を行っています。

平日は昼から夜まで、土・日・祝日も稽古を行っています。お仕事帰りや休日など、ご自身の生活スタイルに合わせて無理なく稽古を続けることができます。

東京都港区・青山に常設道場があります。青山一丁目駅、赤坂駅、乃木坂駅、六本木駅から徒歩圏内と通いやすい立地です。仕事帰りやお出かけのついでにも気軽にお越しいただけます。

見学・体験参加受付中

武術経験の有無は問いません。
まずはお気軽に道場の雰囲気をご覧ください。

会員インタビューも参考になります

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

幼少の頃は少林寺拳法の稽古に励み、現在は山田先生に師事し居合(無外流)と杖術(神道夢想流)の稽古に励んでいます。

無外流居合兵道:免許皆伝
無外眞伝無外流居合兵道:免許皆伝
神道夢想流:免許

趣味
釣りやキャンプなどのアウトドア。

目次